終了しました 2022年度イスラーム信頼学全体集会「対立と紛争のなかで、つなぐ」(Mar. 2)

2023.01.06

カテゴリ: シンポジウム

班構成: 総括班

2022年度イスラーム信頼学全体集会

「対立と紛争のなかで、つなぐ」


2023年3月2日(木)13時半~18時

対面開催(オンライン併用)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所



対立の 「あいだ」を つなげるか


他者の排斥や民族・宗派紛争、さらには戦争・・・
こうした局面では「信頼」は破壊され、その構築は困難だと思われます。
しかし、そのさなかにあっても、対立する両者の間にスペースを作り出し、
つないで交渉する媒介者は存在します。
潜在的あるいは構造的な暴力や剥き出しの暴力には何らかの形で政治的権力が介在するので、
つなぐ行為は水平・垂直いずれの方向にもはたらかざるをえません。
現代のパレスチナ、ドイツ、新疆ウイグル、百年前の欧米・シリアを舞台に、対立や紛争の現場で、
人はどのようなコネクティビティをもって関係と信頼を構築しようとするのか、
本シンポジウムで考えてみましょう。




【プログラム】

総合司会:石井正子(立教大学)
討論者:辻信一(明治学院大学)

11:00    シビルダイアログ展示開場・ポスター掲示
      (企画展「学知の共創を考える:イスラーム信頼学・シビルダイアログキャラバンの試み

13:30-13:35 開会の挨拶 黒木英充(東京外国語大学AA研/北海道大学SRC)
13:35-13:40 趣旨説明 石井正子
13:40-14:05 第1話者 鈴木啓之(東京大学)
      「紛争下での信頼と猜疑:パレスチナ人と「他者」が織り成す関係性」
14:05-14:30 第2話者 昔農英明(明治大学)
      「ドイツのムスリムとユダヤ人の関係性からみる移民問題の現状」
14:30-14:40 休憩
14:40-15:05 第3話者 熊倉潤 (法政大学)
      「新疆ウイグル自治区における信頼あるいは団結の問題:民族幹部の形成と変容」
15:05-15:30 第4話者 黒木英充(東京外国語大学AA研/北海道大学SRC)
      「第一次世界大戦期のレバノン・シリア移民と中東地域の再編」
15:30-15:40 休憩
15:40-16:00 コメント 辻信一(明治学院大学)
16:00-17:00 全体討論
17:00-17:50 ポスターセッション・コアタイム
17:50-18:00 閉会の挨拶

18:00-18:30 シビルダイアログ展示・コアタイム



要旨


1.「紛争下での信頼と猜疑:パレスチナ人と「他者」が織り成す関係性」

   東京大学 鈴木啓之

 この報告では、第一次中東戦争(1948年)によって故郷を失い、その後も多くの紛争を経験してきたパレスチナ人が他者と織り成す信頼と猜疑について論じる。難民や無国籍者、戦時下の市民として突然に他者と関係を取り結ばざるを得ない瞬間を、パレスチナ人はどのように過ごしてきたのだろうか。2000年代に入ってから刊行されたパレスチナ人による回顧録を主な資料として、この報告では紛争下での信頼と猜疑の交差を分析する。特に、紛争では対立する関係にあったユダヤ人やイギリス人などの他者に加えて、本来は同胞であるはずのパレスチナ人や各国のアラブ人への言及に着目することで、紛争下で示される信頼と猜疑の重層性を検討していきたい。


2.「ドイツのムスリムとユダヤ人の関係性からみる移民問題の現状」
   明治大学 昔農英明

 ドイツにおけるムスリムの統合を考える際には、先住の白人ドイツ人とトルコ系移民を中心とするムスリムとの関係性が注目されがちである。ただそれに加えて、ドイツに在住するエスニック・マイノリティ集団間の関係性に着目することも重要である。本報告では、ドイツにおいて歴史的に重要なマイノリティ集団であるドイツ在住ユダヤ人とムスリム、とりわけトルコ系ムスリムとの関係性からムスリムのドイツ社会への統合を分析する。両者の関係性は、ドイツにおける「反ユダヤ主義」や「イスラモフォビア」に端的に示されるように、しばしば差別を被るマイノリティ集団という共通性を有しつつも、ムスリムの問題と指摘される反ユダヤ主義や中東におけるイスラエル・パレスティナ関係が双方の信頼関係を構築するための大きな障害とみなされてきた。本報告では、ドイツのムスリムとユダヤ人との関係性からコネクティビティの課題を考えていく。

3.「新疆ウイグル自治区における信頼あるいは団結の問題:民族幹部の形成と変容」
   法政大学 熊倉潤

 中国の西北部に位置する新疆ウイグル自治区ーー中国共産党は1949年にこの地の統治を始めて以来、党と現地をつなぐ存在である民族幹部の育成に取り組んできた。それはまた党が信頼できないとみなした人間を容赦なく処分し、選別された人間を党の周りに団結させる過程でもあった。1949年以来、2021年に至る長期的スパンを通じて、新疆ウイグル自治区の民族幹部は、どのように起用、あるいは淘汰され、どのような変遷を遂げたのだろうか。民族幹部という補助線をひいて、新疆ウイグル自治区における党と現地の「信頼」、あるいは中国共産党の言い方での「団結」の問題について考えていきたい。


4.「第一次世界大戦期のレバノン・シリア移民と中東地域の再編」
   東京外国語大学AA研・北海道大学SRC 黒木英充

 19世紀後半以降、レバノン・シリア地域出身の移民は、南北アメリカを中心に西アフリカやオーストラリア、フィリピンにまで拡散した。またエジプトや西欧に定着する移民もいた。第一次世界大戦が始まると、オスマン国籍で英・仏・米やその植民地等に居住する移民たちは形式上「敵国民」となった。しかし、マンチェスターにて繊維貿易を世界展開していたFadlo Hourani (著名なアラブ研究者Albert Houraniの父) らマンチェスター・シリア人協会の人々は、英国政府・アラブ反乱軍・世界各地のレバノン・シリア移民をつなぎ、地域の独立のために活動した。本報告では、戦時の「遠隔地ナショナリズム」において見出される、移民のつなぐ力に着目する。



使用言語:
日本語
開催形態:一般公開/無料、対面・Zoomによるオンライン開催/要事前登録
開催場所:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 3階大会議室及び同フロア・サテライト会場


当日はアジア・アフリカ言語文化研究所所内にて、ポスターセッション及び
企画展「学知の共創を考える:イスラーム信頼学・シビルダイアログキャラバンの試み」も開催されます。
          シビルダイアログキャラバン「動物がつなぐ世界」(2021年度)
                       「空と海がつなぐ世界」(2022年度)

ポスターセッションの募集要項はこちらのリンク(20230302_全体集会_ポスター報告の募集)からご確認ください(企画展・ポスター報告は現地開催のみとなります)
ポスター発表者及び発表要旨は、特設サイトにてご紹介しております。
多くの皆様のご来場をお待ちしております。

事前登録:参加ご希望の方はフォーム(https://forms.gle/qF8PaureFqWfu7Cn7)からお申し込みください。
     申し込み期限 2023年2月28日12時 
※オンライン参加者の方には前日までに参加リンクをお送りいたします。


主催:
科研費学術変革領域研究 (A)
 「イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築:世界の分断をのりこえる戦略知の創造」総括班
  (研究代表者:黒木英充(ILCAA/SRC)課題番号:20H05823)


お問合せ:

「イスラーム信頼学」事務局 
E-Mail : connectivity_jimukyoku[at]tufs.ac.jp

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