終了しました 活動記録 ワークショップ「西欧社会の難民受け入れをめぐる信頼のゆらぎ」(Oct. 2)
2021.08.23
カテゴリ: ワークショップ
班構成: A03 移民・難民
A03「移民・難民とコミュニティ形成」班は「帝国史研究会」と共催でワークショップ「西欧社会の難民受け入れをめぐる信頼のゆらぎ」 を開催いたします。
多くの皆さまのご参加をお待ちしております。
ワークショップ「西欧社会の難民受け入れをめぐる信頼のゆらぎ」
日時:10月2日(土)14:00-16:00
報告者:昔農英明(明治大学、A03班研究分担者)
報告題目:「ドイツの難民受け入れをめぐる包摂と排除のポリティクス
:交差するセクシズムとレイシズムについて」
コメンテーター:平野千果子(武蔵大学)
司会:黒木英充(東京外国語大学AA研、A03班研究代表者・領域代表者)
【発表要旨】
2015年のいわゆる「難民危機」により、多くの難民を「歓迎文化」のもと受け入れたドイツは、その「寛容性」をドイツ内外に示した一方で、2015年末にケルンを中心にドイツ各地で起きた、性的暴行・強盗事件によって、ドイツ社会の難民を歓迎するムードは大きく後退し、ドイツ社会に内在するセクシズムとレイシズムの問題を顕在化させました。
本報告ではドイツ社会で大きく顕在化したレイシズムと結びついたセクシズムが国境管理の厳格化とムスリム移民・難民の統合の困難さという言説の強化へとつながる一連の過程を、ケルン事件の事例を中心に検討します。さらに、「歓迎文化」を保持し、「難民受け入れ先進国」とされるドイツ社会が移民・難民との信頼関係を構築していくための諸課題にも触れます。
使用言語:日本語
開催形態:一般公開/無料、Zoomによるオンライン開催(こちらからお申込みください)
主催
科研費学術変革領域研究(A)「イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築:世界の分断をのりこえる戦略知の創造」A03班「移民・難民とコミュニティ形成」(研究代表者:黒木英充(ILCAA); 20H05826)
「帝国史研究会」(代表:平野千果子(武蔵大学))
問い合わせ・連絡先
太田絵里奈 e.otatsukada[at]aa.tufs.ac.jp
活動記録
本ワークショップでは、現代ドイツの移民政策において、レイシズム(人種主義)とセクシズム、ならびに境界管理が具体的にどのような形で結合しているのかを明らかにする報告を行った。2015年のいわゆる「難民危機」で、ムスリム難民などの受け入れにおいて示された「寛容文化」が世界的に注目されることになったドイツは、2000年代以降、リベラルな価値を重要視する移民国家へと転換を図り、それまでの民族的な同質性の変化や人種差別の改善などの指摘もなされる一方で、これまであまり注目されてこなかった、植民地主義に由来するレイシズムがドイツにおいて依然として根強い点がみられ、ドイツの移民受け入れに関する「寛容性」とレイシズムがどのように関係しているのかを本報告では明らかにした。ドイツの移民受け入れ国家への転換においては、移民の統合が進められる一方で、移民の「収容」や送還政策も強化され、そうした「収容」や送還政策では、人種やジェンダーをめぐる分断と人権に関する構造的な不平等の問題を複雑化させる点を報告した。本報告のコメンテータである、平野千果子氏からは、ドイツの移民受け入れやレイシズムについての、フランスとの比較の視点からきわめて示唆に富むコメントが提示され、またフロアからもいくつかの質問があるなど、移民・難民との信頼関係の構築にかかる課題について、有益な議論がなされた研究会であった。(昔農英明、2021年11月2日掲載)