終了しました 活動記録 ワークショップ「近代帝国のなかの翻訳とコネクティビティ」(Mar. 14)

2024.02.08

カテゴリ: ワークショップ

班構成: A02 知の変換C01 Digital Humanities

A02「イスラームの知の転換」はC01「デジタル・ヒューマニティーズ的手法によるコネクティビティ分析」と公募研究「18~19世紀のロシアにおけるイスラーム法学の継承をめぐるムスリム知識層の形成」との共催でワークショップ「近代帝国のなかの翻訳とコネクティビティ」を開催いたします。

皆様の参加をお待ちしております。

 

ワークショップ「近代帝国のなかの翻訳とコネクティビティ」
日時:2024年3月14日(木)、15:30~17:30
場所:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所3階マルチメディア会議室(304) / オンライン

報告者
高松洋一(東京外国語大学AA研/A02)「「オスマン憲法」の非トルコ語公式版:翻訳者、刊行、反応」
磯貝真澄(千葉大学)「人名録が想像させるムスリム・コミュニティ:リザエッディン・ブン・ファフレッディン『事績』」

使用言語:日本語
開催形態:ハイブリッド/一般公開/無料/要事前登録

事前登録はこちらから

※事前登録締切:2024年3月13日(水)正午

 

共催: 学術変革領域研究(A)「イスラームの知の変換」(研究代表者: 野田仁(東京外国語大学AA研)、課題番号: 20H05825)/ 学術変革領域研究(A)「デジタルヒューマニティーズ的手法によるコネクティビティ分析」(研究代表者: 熊倉和歌子(慶応義塾大学)、課題番号: 20H05830)/ 公募研究(A)「18~19世紀のロシアにおけるイスラーム法学の継承をめぐるムスリム知識層の形成」(研究代表者: 磯貝真澄(千葉大学)、課題番号: 21H05371)

 

問い合わせ:shin_kato[at]aa.tufs.ac.jp

活動記録

本ワークショップでは、オスマン帝国、ロシア帝国という近代帝国において翻訳が果たした役割やウラマーが有した共同体認識について議論がおこなわれた。
高松「「オスマン憲法」の非トルコ語公式版」は、1876年12月公布の「オスマン憲法」について、多様な言語での公式の翻訳が出版されていることに注目し、翻訳者や翻訳テクスト間の関係、翻訳版に対するオスマン帝国内の臣民からの反応について検討した。翻訳が政府内の非ムスリム官僚によって担われたこと、翻訳の担い手の中には後に政府内の高官の地位に昇った人物も含まれていたこと、従来の研究が述べるように、アラビア語以外の翻訳がフランス語訳からの重訳であるとは必ずしも言えないこと、また、とりわけ、ギリシア語訳についてはオスマン・トルコ語での正文に忠実な翻訳を試み作成されたものである蓋然性が高いことが指摘された。また、憲法の公布後、様々な集団から種々の言語で執筆された感謝状が政府に対して提出されており、多言語による憲法の公布がこのような臣民からの反応を惹起したことが述べられた。質疑応答においては、この時政府に対して提出された感謝状が、それまでに提出されたものとどのように意義を異にするのか、また、なぜギリシア語訳のみフランス語訳から受けた影響が小さかったのか、などといった疑問が参加者から上がった。これに対して報告者は、前者については、憲法公布時に提出された感謝状の内容が紋切り型ではない点で異なっていること、後者については、翻訳者個々人の判断が作用したと考えるのがよいことを返答した。
磯貝「人名録が想像させるムスリム・コミュニティ」は、ヴォルガ地方生まれのムスリム知識人リザエッディン・ブン・ファフレッディンが執筆したウラマーの人名録『事績』を検討し、彼の有した同地域についての歴史や共同体に関わる認識について議論した。リザエッディンは『事績』の編纂を共同体のために教育活動をおこなった人々を記録するという意図のもとにおこなったこと、また、彼は『事績』において、ヴォルガ・ウラル地域の歴史の始まりをブルガールのイスラーム化に見出していたことが指摘され、『事績』が同地域のイスラーム共同体の歴史におけるウラマー間の人的つながりを描いたものとして位置付けられることが示された。その上で、『事績』の刊行は、読者であるウラマーからの反応を呼び、そこには出版メディアを通じた共同体意識の共有が見られることが提示された。質疑応答の際には、リザエッディンの著述に対して外部地域の学者や著作が与えた影響についての質問が出たほか、リザエッディンの思想に関する先行研究と報告者の立場との関係を再考することや、リザエッディンの著作に見える用語の意味や議論の地理的範囲についても今後さらに検討を深めることが議論に資するのではないかというコメントもみられた。

その他のお知らせ

PAGETOP