終了しました 活動記録 緊急講演会「スーダンの軍事衝突―現状、背景、見通し」(Apr. 27)
2023.04.24
カテゴリ: その他
イスラーム信頼学科研総括班は、B03班「紛争影響地域における信頼・平和構築」及び東京外国語大学現代アフリカ地域研究センターとの共催で、今日のスーダン情勢に関する緊急講演会を開催いたします。
皆様のご参加をお待ちしております。
日時:2023年4月27日(木)19:00~21:00
開催形態:一般公開/無料、zoomによるオンライン開催(要登録)
使用言語:日本語
講師 アブディン・モハメド(東洋大学国際共生社会研究センター)、飛内悠子(盛岡大学)
司会 武内進一(東京外国語大学)
プログラム
19:00~19:05 趣旨説明、イントロダクション、講師紹介(武内進一)
19:05~19:25 講演1 スーダン概況と軍事衝突に至る背景(飛内悠子)
19:25~20:30 講演2 軍事衝突の現状、背景、見通し( アブディン・モハメド)
20:30~20:55 フロアからの質問と回答
20:55~21:00 閉会挨拶(黒木英充)
参加登録:下記URLにアクセスの上、事前登録をお願いいたします。
https://rikkyo-ac-jp.zoom.us/meeting/register/tZArd-mgrjIrG9bnGnvSJbnbN2qd7h-iTbVz
※上限数に達したため、登録は打ち切りました。ご了承ください。
お問い合わせ先:イスラーム信頼学事務局 connectivity_jimukyoku[at]tufs.ac.jp
※お問い合わせは、当日16時までにお願いいたします。
それ以降の問い合わせにつきましては対応いたしかねますので、ご了承ください。
共催:科研費学術変革領域研究 (A)「イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築:世界の分断をのりこえる戦略知の創造」総括班(研究代表者:黒木英充(ILCAA/SRC)課題番号:20H05823);「紛争影響地域における信頼・平和構築」(研究代表者:石井正子(立教大学)課題番号:20H05829);東京外国語大学現代アフリカ地域研究センター
活動記録
4月15日に突如始まった武力衝突を受けて、緊急講演会「スーダンの軍事衝突―現状、背景、見通し」を上記の要領で実施した。強い社会的関心を受けて、200人近い視聴者がオンラインで参加した。
冒頭、司会による簡単なイントロダクションの後、飛内悠子氏が今回の衝突に至る経緯を説明した。それからアブディン・モハメド氏に司会が質問を投げかける形で、①武力衝突勃発後の動き、②準軍事組織RSF(即応支援部隊)と指導者ヘメティについて、③国軍と指導者ブルハーンについて、④周辺国との関係、⑤今後の見通し、というおおよそ5つの論点を軸に、意見を伺った。その後、視聴者からチャットで質問を受け付けた。
飛内氏、アブディン氏の報告、解説から次の点が明らかになった。
1)RSFは、もともとバシール前大統領が国軍の台頭を抑えるために創設した民兵組織であった。それがバシール政権のみならず、周辺国や関係諸国(移民流入を抑止したいEUまで)の思惑もあって肥大化した。
2)ヘメティは自身の出身部族リゼイガト(Rizeigat)を中心に徴兵を進め、チャド、中央アフリカ、マリ、ブルキナファソなどサヘル地域各国に居住するアラブ人がRSFに参加した。また、国軍兵士よりも良い条件で徴募したため、その兵員数は急速に膨れ上がった。
3)ヘメティはダルフールの金鉱山に利権を持つ(バシールに与えられたもの)が、国軍もスーダン経済に広く利権を確保している。
4)ブルハーンと国軍はエジプトと関係が深く、ヘメティとRSFはUAEやリビアのハフタル将軍側から支援を受けている。とはいえ、両者と周辺国とのネットワークは複雑に入り組んでいて、周辺国が二つの陣営にきれいに分かれるわけではない。
4)民主化勢力は、軍事政権を相手にして、現実的な交渉がうまくできなかった。軍やRSFが持つ多大な利権を一気に解消するのは難しい。民主化を進めるために、まずもってスーダン国家の一体性が担保される必要がある。
5)スーダンの人々が置かれた状況は、これからいっそう厳しくなる。国内避難民や周辺国への難民も増えるだろう。こうした人々への人道支援は絶対に必要で、それに対する日本の貢献も期待される。
6)RSFがそもそも軍に対する牽制として創設された経緯からも、ヘメティとブルハーン協力関係は、民主化勢力を抑えるための機会主義的なものでしかなかった。換言すれば、もともと両者間に信頼などはなく、武力衝突は信頼がなくなったことで起こったわけではない。今回の武力紛争勃発の経緯には諸説あるが、両者の間に存在論的な脅威が高まり、「相手を潰さなければ自分が滅ぼされる」という恐怖感が強まったことが、衝突の前提になったと考えられる。(文責:武内進一)