終了しました 活動記録 ワークショップ「比較の中のイスラーム経済」(Feb. 22)

2023.01.23

カテゴリ: ワークショップ

班構成: A01 イスラーム経済C01 Digital Humanities

科学研究費学術変革領域研究(A)「イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築」(領域代表:黒木英充)では、A01班「イスラーム経済のモビリティと普遍性」(研究代表者:長岡慎介)とC01班「デジタル・ヒューマニティーズ的手法によるコネクティビティ分析」(研究代表者:熊倉和歌子)との共催で、荒井悠太氏(A01班研究員、京都大学)による研究発表会を開催いたします。

日時:2023年2月22日(水)14:00-16:00

発表者:荒井悠太(A01班研究員、京都大学)

発表題目:「歴史叙述・権力・経済――イブン・ハルドゥーン『イバルの書』における人間社会観」

コメンテーター:伊藤隆郎(C01班研究分担者、神戸大学)

使用言語:日本語

開催形態:一般公開/無料、Zoomによるオンライン開催/要事前登録

事前登録:https://kyoto-u-edu.zoom.us/meeting/register/tZwvf-GrrjwuE9LS9S3H4UBks8Q9KEDn6PAl

要旨:

イブン・ハルドゥーンの「序説」(『歴史序説』)は、イスラーム経済史の観点からも早くから関心を集めてきた。しかし「序説」にはリバーといった現代イスラーム金融においても主要な問題をめぐる独自の考察はなく、イスラーム法に基づき経済活動や制度に関する著述を残した法学者達とは異なる観点から関心を集めてきたのである。すなわち、イブン・ハルドゥーンが経済史の観点から注目されてきたのは、彼が「序説」で提示した人間社会と王朝権力の循環的な盛衰プロセスの隅々まで、生計、市場、労働、奢侈といった経済学的ファクターが浸透しているという理由による。報告者の見方では、彼は単に14世紀の部族王朝における自身の経験に留まらず、『イバルの書』で取り上げている伝説上の古代部族から14世紀に至るまでの諸民族・諸王朝の歴史に対する俯瞰的な認識に基づき、歴史上の「諸状態」の長期的な変遷を念頭に置いて人間社会を捉えている。しかしながら、かかる『イバルの書』の歴史叙述を経済史的アプローチと結び付ける試みは従来ほとんどなされてこなかった。本報告においては、種々の経済学的ファクターを織り込んだイブン・ハルドゥーンの人間社会観ならびに権力観が、その基層にある歴史叙述といかにして結び付いているかを考察したい。

共催:科研費学術領域変革研究(A)A01「イスラーム経済のモビリティと普遍性」(研究代表者:長岡慎介(京都大学)課題番号:20H05824)、C01「デジタル・ヒューマニティーズ的手法によるコネクティビティ分析」(研究代表者:熊倉和歌子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)課題番号:20H05830)

問い合わせ先:荒井悠太 arai.yuta.7e(at)kyoto-u@ac.jp

活動記録

本報告の目的は、イブン・ハルドゥーン「序説」にみられる経済的諸概念を、「序説」に提示される人間社会観及び歴史観との関係において理解することである。この作業を通じて、彼の描く人間社会を、王朝及び農村と都市から成る社会の間での財の循環に基盤を置く市場と捉え、また人間社会の盛衰を王朝権力の盛衰と相互に連動するものとして描き出した。
 本報告ではまず、イスラーム経済史におけるイブン・ハルドゥーンの扱いを確認し、イブン・ハルドゥーンの経済論が統治論から切り離して扱われてきたことの問題点を指摘した。次に、イブン・ハルドゥーンの「市場」が政治権力と未分化であり、王朝の盛衰と連動して社会もまた繁栄・荒廃するものと位置付けられていること、かかる社会観はイブン・ハルドゥーン自身の歴史観や14世紀までの北アフリカ社会の実態に根差したものであり、市場の自立性を前提とする近代西洋の市場論とは質的に異なるものである点を指摘した。
 コメンテーターの伊藤隆郎氏(C01)からは、『イバルの書』底本の質、「経済iqtisad」概念の由来、先行研究の理解についてなど、多岐にわたるコメントが寄せられた。またフロアからも、「ポリティカル・エコノミー」についての指摘、中世社会史研究との関連付けの可能性などのコメント、質問が寄せられた。

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