終了しました 【発表者確定】全体集会におけるポスター発表者と要旨(Mar. 2)

2023.01.12

カテゴリ: シンポジウム

班構成: 総括班

全体集会のポスターセッションの発表者が下記の通り決定いたしましたので、ご案内いたします。


注意:ポスター報告は現地開催のみとなり、Zoomでの配信はございません。

 

荒井悠太(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科研究員)

「イブン・ハルドゥーンをいかに読むか:歴史・理論・イメージのはざまで」

14世紀の北アフリカに生きたイブン・ハルドゥーン(d.1406)については既に膨大な数の研究が存在し、ほとんど研究され尽くしたかに見える。しかし実際には未開拓の領域や再解釈の余地は少なからずあり、新しい研究潮流も現れてきている。ポスターにおいては、人文学のさまざまな方法論を複合的に用いた、イブン・ハルドゥーン研究の可能性について検討する。

岡部友樹(大阪経済法科大学助教)

「レバノン内戦における宗派内と宗派間の暴力の展開」

本発表では、レバノン内戦(1975年〜1990年)における宗派内で起きた暴力と宗派間で起きた暴力、そして2つの相互作用について明らかにする。15年間にわたる内戦のなかでは、地域勢力や欧米の国々が関与するなかで宗派間や民族間の暴力が多く見られた一方で、宗派内部での権力争いや暴力的な衝突も少なからず起きていた。この側面は、市民の記憶に深く刻まれながらも既存研究において見過ごされているため、本発表ではNGOが新聞から収集したデータと2つの事例分析から、集団内での暴力の動態を示す。また、集団内での暴力は独立したものではなく、集団間で起こる暴力と同時並行で起こっていたことから、両者の相互作用についても焦点を当てる。

桂悠介(大阪大学大学院 博士後期課程)

「メディエーターとしての日本人改宗ムスリム:ミクロな相互作用からの信頼醸成の可能性」

本発表では、インタビュー及び「入信記」の分析により、日本人改宗ムスリムの改宗プロセスとそれに続く日常的・社会的実践の諸相を明らかにする。これにより個々人の変容の内実や実践が日本の主流社会とイスラームを媒介し、ミクロなレベルからの信頼醸成に繋がりうることを示す。

嘉藤慎作(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究機関研究員)

「近世インド洋海域の港市スーラトにおける商人のコネクティビティと多文化共生」

コスモポリスとしてのムガル朝時代の港市スーラトを対象として、商人間のつながりに焦点を当て、多宗教・多民族共生が港市で発生した商人間の係争解決にいかに寄与したのかを議論する。

佐藤将(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究機関研究員)

「空間分析から何が見えるか?:信頼を地図で表現するために」

GISを用いた地図は単に分布図だけにとどまらず、空間分析手法を援用することで様々なデジタル地図の表現が可能となる。本発表では発表者がこれまで研究上で作成したデジタル地図を用いて、「つながり」の可視化の可能性を考えていきたい。

佐藤誉翼(マラヤ大学大学院イスラーム研究科修士課程)

「ワクフの持つ富の再分配効果について:効果測定に向けた論点整理」

経済市場と社会市場を想定した際に、社会基金としてのワクフが経済市場から得た投資益を社会市場へ流入させる事で富の再分配が起こると捉える事ができる。この分配構造を分析する事で、効果を測定する際に必要な論点をまとめる。さらには、一般的な社会基金とワクフの定義の違いやそこから期待される効果の差について議論する。

杉森美和子(東京大学大学院教育学研究科博士課程)

「精神疾患を語る場における信頼の生成:精神障がい者家族会と家族会が参加するメンタルヘルスリテラシー教育のケースからー」

精神疾患に直面した経験を語ることには、困難が生じやすいが、精神障がい者家族会は長年、互いを信頼して語り合う場を生成することを試みてきた。現在、その知見に基づいたメンタルヘルスリテラシー教育も展開されている。本発表においては、同じ経験を有する者同士が信頼関係を構築し、連帯することで生まれる信頼の連鎖について、具体的な事例を参照しつつ考察することを試みたい。

鈴木慶孝(日本学術振興会特別研究員PD)

「「移民/難民受け入れ国トルコ」の社会統合の現状と課題」

本発表では、移民や難民の受け入れ国となっているトルコ共和国の、シリア難民の受け入れの実践や、シリア難民によるコミュニティ作りを紹介するとともに、トルコが移民や難民を包摂するための今後の課題も併せて展示させて頂きます。

中鉢夏輝(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程)

「環境配慮型モスクとハリーファ概念の結びつきから見るイスラーム環境倫理の多様性」

本研究は、環境保護実践を促すための制度や道具に、ムスリムはなぜイスラーム環境倫理を組み込むのか、明らかにするものである。本報告では、インドネシアを中心に増加する環境配慮型モスクのハリーファ概念との結びつきについて、モスク間の差異と共通性を考察する。

辻大地(九州大学大学院人文科学府博士後期課程)・金田千澄(立命館大学文学部西洋史学専攻)

「女奴隷と「パトロン」:前近代イスラーム社会における信頼関係の構築(仮)」

本発表では、ジャーヒズの『カイナの書(Kitāb al-Qiyān)』を中心に扱い、アッバース朝期イスラーム社会における、女奴隷やそれをとりまく人々(主人や奴隷商人、女色家など:「パトロン」)の間で構築された信頼関係やコネクティビティの諸相を紹介すると同時に、そこに生じる権力関係や男性間のホモソーシャルな関係、またその背景となる当時の社会状況について広く検討する。

出川英里(千葉大学大学院人文公共学府博士後期課程)

「19世紀後半のエジプトにおける外国人:現地住民関係と司法制度(仮)」

エジプトでは1875年に外国人が関わる民事、商事、一部の刑事事件を審理する混合裁判所が設立された。本発表では、外国人商人と農民の間に生じた土地訴訟を題材として、混合裁判所の法制度が両者の関係形成にいかなる役割を及ぼしたのかを考察する。

村瀬智子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教務補佐員/ 地唄舞花崎流名取)

「「名もなき」女性の物語がつなぐ世界:地唄舞の抽象表現の可能性」

江戸時代より女性の舞手を中心に受け継がれてきた地唄舞は、座敷で扇一本を道具に舞う、日本舞踊の一種である。発表では、「名もなき」女性たちの心情を描く、地唄舞の簡素かつ抽象的な表現を通じて、演者と観客それぞれが、自らの内面と対話しつつ緩やかに広くつながる可能性を論じる。

藻谷悠介(大阪大学大学院人文学研究科特任研究員/東京大学大学院人文社会系研究科博士課程)

「どうするイエズス:イエズス会シリア宣教団と現地政治社会のコネクティビティ」

1831年に活動を開始したイエズス会シリア宣教団が、現地のキリスト教コミュニティのみならずムスリム有力者、さらには同時期にシリアに侵攻したムハンマド・アリー政権との積極的な関係構築を通じて、宣教活動の維持を懸命に模索していく過程を検討する。

森才人(早稲田大学大学院文学研究科中東・イスラーム研究コース修士課程)

「オスマン朝期カイロ城塞内部の都市空間:政治的中枢あるいは生活圏として」

カイロ城塞(qal‘a al-jabal)は、マムルーク朝征服後の16–18世紀も、オスマン朝の軍団やエジプト総督の拠点となったことで、政治的中枢として機能した。本発表では、こうした側面に加え、生活圏としてのカイロ城塞の一端を、ワクフ文書等の史料から明らかにする。その上で、①軍人支配層と、②商人、職人、宗教施設関係者等の人々、との関わり合いを考察し、軍人層を社会史の視角に入れることの重要性についても論じる。

守田まどか(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究機関研究員)

「近世イスタンブルの街区と異宗教間コネクティビティ」

宗教的に多様な住民を内包したオスマン帝国の都、イスタンブルにおいて街区(マハッレ)は、 日常生活の基本単位であり、 かつ都市行政の末端組織として機能したと理解されています。このポスター発表では、街区が、しばしば宗教の違いを超えた「水平的な人間関係」と「垂直的な権力関係」が 交差する場でもあり、その歴史的展開を分析することを通して、ミクロレベルにおけるイスラーム的コネクティ ビティの一事例を提示する可能性について考えてみたいと思います。

薮内彩季(慶應義塾大学大学院文学研究科修士課程)

「近代エジプトにおける知識人のつながり」

19世紀末〜20世紀初頭のエジプトにおいて、近代的な知識人であるエフェンディーがお互いどのような関係を持ち、コミュニティを形成していたか、また、彼らのウラマーとの関わりについて、教育雑誌『ラウダトゥルマダーリス』を主に用いながら議論する。それにより、エフェンディーが自身の文化的・社会的特異性についてどのように捉えていたのか議論する。

山本沙希(立教大学異文化コミュニケーション学部ポストドクトラル・フェロー)

「現代アルジェリアの女性零細事業主が描く「信」世界」

不確実な都市の市場で零細事業を営む女性個人事業主は、いかに他者への信頼ないし不信を醸成しつつ、商取引を実践しているのか。本発表では、現代アルジェリアの首都アルジェを生きる女性零細事業主によって築かれる、「信」が多層的に交差した商世界の位相を考察分析することにより、個の視点からイスラーム的コネクティビティへの接近を試みる。

米田優作(立命館大学大学院国際関係研究科博士後期課程/日本学術振興会特別研究員DC1)

「現代エジプトのサラフィー主義者による過激主義批判:信頼構築の試みと限界」

本報告では、暴力的な過激主義(いわゆるジハード主義/サラフィー・ジハード主義)が台頭するコンテクストのなかで、非暴力路線を掲げるサラフィー主義者らがいかにそれとの差異化を図ろうとしてきたかを論じる。過激主義の台頭は、次の2つの側面から、非暴力路線のサラフィー主義者を板挟み状態に陥らせてきた。すなわち、1)彼らを穏健すぎると批難するジハード主義者からも、2)彼らを過激すぎるとみなす体制や治安機関からも、圧力にさらされてきたのである。本報告では、現代エジプト最大規模のサラフィー主義組織であるダアワ・サラフィーヤを事例に、彼らがいかに過激主義との差異化を行い、政治権力との間の「信頼」構築を試みてきたのかを、指導者の著作を主な資料として確認したい。

Kazuto Matsuda(Graduate Student, MA in Gulf Studies, Gulf Studies Center, Qatar University) 

“Theory and Practice: Discussing the Nexus between Comprehensive Security Theory and Japan-Gulf Relations”

There has been a paucity of literature on Japan’s relations with the Gulf states, particularly from a theoretical perspective. In this light, this study sheds light on Yukiko Miyagi’s (2008) comprehensive security theory and discusses to what extent the theory reflects the Japanese authorities’ recent foreign policy approach vis-a-vis the Gulf states.(ポスターはこちらからご覧いただけます)

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