「公募研究」とは、本研究領域の研究をより強化・発展・拡張するために「計画研究」と連携しながら実施する研究です。今年度は以下の3つのカテゴリーを設け、合計5件の課題が採択されました(研究期間は2024年度末までの2年間)。
A01イスラーム法のワファー(契約の誠実履行)の概念と適用:社会・経済の信頼関係から
Khashan AMMAR立命館大学
本研究では、イスラーム経済の鍵概念「ワファー=契約の誠実履行」を、ムスリム社会・経済の「互助の信頼性」源泉として、古典期と現代経済活動の展開を検討する。イスラーム法学の史資料を使った伝統的概念解析、現代の伝統再活性化検証、ムアーワダート取引(売買性の取引)とタバッルアート取引(寄付性がある取引)の事例研究、最新フィンテックによるデジタル化でのイスラーム的信頼性分析を行い、「イスラームの互助の信頼学」確立を目指す。
A03日本・満洲・朝鮮半島生まれタタール移民のコネクティビティを巡る語りの研究
沼田 彩誉子東京外国語大学AA研
国民国家において「管理対象」とみなされる移民が、受入社会における人間関係を主体的に作るとはどういうことか。移民自らがいかに関係作りの意味づけを行うかを、ポジショナリティの概念を用いて背後にある権力関係を踏まえつつ考察することで、「主体的」である様がみえてくるのではないか。本研究では、ロシア革命を機にヴォルガ・ウラル地域から東アジア各地に渡り、その後トルコや米国へと再移住したタタール移民に着目する。語りに基づき、戦前日本の国策に取り込まれ、戦後は脱植民地化や国民像(再)構築の波に翻弄された彼らの受入社会との関係性の解明を目指す。
B0114~16世紀アラブ都市エリート間の名目的コネクティビティの可視化分析
太田(塚田)絵里奈東京大学附属図書館アジア研究図書館
本研究は、14~16世紀のアラブ都市エリート(学者・行政官)の間で広く取り交わされた、名目的な免状(イジャーザ)に基づく師弟関係に着目する。免状を介して構築された、実態を伴わない間接的なつながりが、個人や家系の栄達において果たした役割の解明を主眼としつつ、当慣行に基づく社会上層部のコネクティビティを、デジタルツールを用いて可視化することで、このような名目的な関係構築が慣習化した社会的背景を検討する。
B02イスラーム諸国の信頼醸成と合意形成:人類互敬・同胞精神と現実政治の拮抗の中で
池端 蕗子立命館大学
イスラームという宗教を理念に掲げる政府間国際機構であるイスラーム協力機構(OIC)とその関連組織、国際的な法学裁定機関におけるイスラーム法学者たち(ウラマー)の活動とネットワークに注目し、イスラームに基づく国際的な規範形成がイスラーム諸国間およびイスラーム世界内外における信頼醸成にどのように寄与しているかを明らかにする。とりわけイスラームの立場から「人権」規範を再解釈し、国際的な合意形成を図る営みに着目し、そのプロセスが国際政治における信頼/不信の動態とどのように関係しているかを考究する。
D02有事と食糧―中東・北アフリカにおいて試されるコネクティビティと信頼構築
井堂 有子新潟国際情報大学
本研究では、食の安全保障を「食糧をめぐる重層的で有機的な信頼関係に基づいたコネクティビティの一形態」と仮定しつつ、中東・北アフリカ地域における安定的食糧供給と地域協力の可能性を模索する。具体的には、有事の食糧供給に関して、現在の課題(ウクライナ危機と黒海封鎖によるMENA地域の食糧不安への影響)、過去の大戦間期の飢饉の事例、アジアでの地域協力の事例を併行的に検証し、中東・北アフリカ地域における脆弱性と地域の共通課題を特定する。
科研費学術変革領域研究(A)「イスラーム信頼学」の公募研究(2023-2024年度分)が、8月1日より公募開始となりました。
ご周知のほど、よろしくお願い申し上げます。
<学術変革領域研究(A)(公募研究)、新学術領域研究(終了研究領域)>
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/boshu/1394561_00006.htm
「イスラーム信頼学」の公募研究の内容は本文22頁に掲載されています。
公募締切りが10月5日となっていますが、各大学など、機関内部の締め切りがそれぞれ異なりますのでご注意ください。
日本学術振興会の科研費電子申請システムを利用して申請してください。
2021年度採択課題の概要(合計7件)
https://connectivity.aa-ken.jp/koubo/y2021/