終了しました 活動記録 ワークショップ「ディアスポラによる「遠隔地ナショナリズム」と信頼構築」(Jan. 6)

2021.12.13

カテゴリ: ワークショップ

班構成: A03 移民・難民B03 平和構築

A03「移民・難民とコミュニティ形成」班とB03「紛争影響地域における信頼・平和構築」班はワークショップ「ディアスポラによる「遠隔地ナショナリズム」と信頼構築」を開催いたします。
多くの皆様のご参加をお待ちしております。


A03・B03班共催ワークショップ「ディアスポラによる「遠隔地ナショナリズム」と信頼構築」


日時:2022年1月6日(木曜日)13時~15時
報告者:長有紀枝(立教大学、A03班研究分担者)
  「母国の信頼構築に影響を与えるボスニア・ヘルツェゴヴィナのムスリム・ディアスポラのコネクティビティ
     :スレブレニツァ事件のジェノサイド認定を巡るロビー活動を事例に」
コメンテーター:佐原徹哉(明治大学、B03班研究分担者)
司会:黒木英充(東京外国語大学AA研/ 北海道大学SRC、A03班研究代表者・領域代表者)

【発表要旨】
ボスニア・ヘルツェゴヴィナは、他の旧ユーゴ諸国や東・中欧諸国同様、出稼ぎ労働者や移民の送り出し国として知られています。難民の帰還が見込まれたボスニア紛争終結後も、多くの住民が国外に移住、現在、国民の約半数以上が海外にいる計算です。本報告では「遠隔地ナショナリズム」「犠牲者ディアスポラ」という概念を手掛かりに、ボスニア・ムスリムのディアスポラ組織がどこでどのように形成され、何を目的に活動しているのか、世界的にどのようなネットワークを築き、未だ分断が激しい祖国の平和構築や信頼構築にどのような影響を与えているのか。クロアチア人やセルビア人移民との違いを意識しつつ、ボスニア紛争終盤に発生した「スレブレニツァ事件」のジェノサイド認定をめぐるロビー活動を事例に検討します。

使用言語:日本語
開催形態:一般公開/無料、Zoomによるオンライン開催(事前登録制)
こちらのリンクよりお申込みください。

共催
科研費学術変革領域研究(A)「イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築:世界の分断をのりこえる戦略知の創造」
A03班「移民・難民とコミュニティ形成」(研究代表者:黒木英充(ILCAA/ SRC); 20H05826)
B03班「紛争影響地域における信頼・平和構築」(研究代表者:石井正子(立教大学); 20H05829)

問い合わせ・連絡先
太田絵里奈 e.otatsukada[at]aa.tufs.ac.jp

活動記録

 本ワークショップでは、ボスニア紛争中、現地で難民・国内避難民に対する人道支援にかかわり、その後再発防止の観点からスレブレニツァ事件のメカニズム解明に取り組む報告者が、ボスニアのディアスポラ組織の形成過程と目的、種類、団体間のコネクティビティ、祖国の平和構築や信頼構築に与える影響について、旧ユーゴ国際刑事裁判所(ICTY)からボスニア紛争中唯一ジェノサイドと認定されたスレブレニツァ事件に関するモスリム・ディアスポラの広範な活動を事例に論じた。議論に先立ち、「ディアスポラ」「遠隔地ナショナリズム」「犠牲者意識ナショナリズム」といった概念や先行研究、旧ユーゴ、ボスニアをめぐる政治情勢、同地の移民・難民問題について、またジェノサイド罪のもつ特殊性、政治性について整理がなされた。
 コメンテーターの佐原氏からは、捕虜の大量殺害であるスレブレニツァ事件をICTYがジェノサイドと認定した論拠、パレスチナ支援で名を馳せたトルコの人道支援団体IHHの起源がボスニア紛争の人道支援にある点など、トルコとボスニアの強い関係をはじめ、イスラムのコネクティビティの視点から重要な論点が示された。フロアからはホロコースト博物館や従軍慰安婦像の建立を例に、事件の発生地ではない場所にディアスポラが慰霊碑を建て、事件を顕彰する動きがあるのか、またルワンダとの対比において、ディアスポラは、国内政治の対立を熾烈化・増幅し、分裂国家の平和構築や再統合を阻害しているのか、といった質問が寄せられた。前者には、スレブレニツァの場合、事件の起きた7月11日という「時」に焦点が当てられ、各地で記念日の定立活動が行われている実態が、後者には少なくともスレブレニツァの事例からは、ディアスポラが再統合に寄与する役割を果たしてはいるとはいえない現状が報告された。(長有紀枝、2022年1月23日掲載)

 

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