終了しました 活動記録 ワークショップ「移民経験と語り」(Dec. 23)

2021.12.07

カテゴリ: ワークショップ

班構成: A03 移民・難民B01 国家体系

A03「移民・難民とコミュニティ形成」班とB01「イスラーム共同体の理念と国家体系」班は東洋大学アジア文化研究所客員研究員の沼田彩誉子さんをお招きし、ワークショップ「移民経験と語り」を開催いたします。
多くの皆様のご参加をお待ちしております。


「イスラーム信頼学」A03・B01班共催ワークショップ「移民経験と語り」


日時:12月23日(木曜日)10時~12時
報告者:沼田彩誉子(東洋大学アジア文化研究所)
「オーラルヒストリーから考える東アジア生まれタタール移民2世のコネクティビティ」
コメンテーター:長縄宣博(北海道大学SRC/ 東京外国語大学AA研、B01班研究分担者)
司会:黒木英充(東京外国語大学AA研/ 北海道大学SRC、A03班研究代表者・領域代表者)

【発表要旨】
20世紀前半の旧満洲、朝鮮半島、日本で生まれたタタール移民2世は、移住先のトルコやアメリカにおいて、報告者を相手に、何を、どのように語ったのか。本報告では、インタビュー時点の「いま・ここ」と、語られたエピソードが生起した「あのとき・あそこ」というふたつの位相を関連付けて、2世のコネクティビティを考えます。その際、①ロシア革命による難民の子というマイノリティとしての立場性が、受入れ社会の構造を問う視点を内包していること、②語りは相互行為によって生み出されるため、語り手(タタール移民2世)だけでなく聞き手(報告者)の立場性も分析の対象となることが、信頼構築をめぐるマジョリティや権力の相対化につながる可能性も模索します。

使用言語:日本語
開催形態:一般公開/無料、Zoomによるオンライン開催(事前登録制)
こちらのリンクよりお申込みください。

共催
科研費学術変革領域研究(A)「イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築:世界の分断をのりこえる戦略知の創造」
A03班「移民・難民とコミュニティ形成」(研究代表者:黒木英充(ILCAA/ SRC); 20H05826)
B01班「イスラーム共同体の理念と国家体系」(研究代表者:近藤信彰(ILCAA); 20H05827)


問い合わせ・連絡先
太田絵里奈 e.otatsukada[at]aa.tufs.ac.jp

 

活動記録

語りを通じて明らかにされる移民の経験から「イスラーム的コネクティビティにみる信頼構築」を読み解くために、本ワークショップでは、方法論としてのオーラルヒストリーの可能性を模索した。報告ではまず、ロシアのヴォルガ・ウラル地域から、東アジアを経由し、トルコ、アメリカに至るタタール移民の移住史を押さえたのち、東アジアで生まれた2世の語りに基づき、ポジショナリティ(社会的立場性)とコネクティビティ(主体的に動いて関係を作ること)の連関を提示した。特に、1)個人、移民コミュニティ、ホスト社会、国民国家という次元の異なる社会関係のなかに語り手のポジショナリティを位置づけること、2)調査者自身のポジショナリティを批判的に捉えることが、個人が人と人とのヨコの関係を作ろうとするときに影響するタテの関係、すなわちコネクティビティを取り巻く権力関係を可視化すると主張した。

コメンテーターの長縄宣博氏からは、語りから見える独自の過去の光景が文字を使う歴史研究に何を示すのかという、オーラルヒストリーの根幹に関わる問題をはじめ、分析用語としてのアイデンティティの用い方、ロシア/ソ連と2世の関係性、全世界タタール会議に対するタタルスタン共和国と2世の認識の相違など、幅広く示唆に富むコメントが提示された。さらにフロアからは、3世以降の若い世代への言語・文化の継承等について、質問が寄せられた。最後に、報告者が提示した「イスラーム的なもの」の解釈とは何かという問いに対し、司会で領域代表者の黒木英充氏から、「イスラームから導くことが成り立たないではないか、というところから、逆に考えていくことも必要である」との指摘がなされた。

(沼田彩誉子、2022年1月24日掲載)

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